Blog
ブログ
インバウンド集客方法にはどのようなものがある?

インバウンド集客とは、訪日外国人をお店や施設に呼び込むためのマーケティング施策です。コロナ後の需要回復で訪日客は再び急増し、2024年には過去最高の約3,687万人が訪日し消費額も約8.1兆円に達しました。
こうした追い風を受け、2025年の観光市場はかつてない盛り上がりを見せています。本記事では、最新のインバウンド集客方法やSNS戦略、そして実際に成果を上げている成功事例を総まとめし、インバウンド需要を取り込むポイントを解説します。
インバウンド集客で直面しやすい4つの課題

インバウンド対応を進める中で、多くの店舗・施設が直面する代表的な課題が4つあります。まずはどのような課題に直面しやすいのかを見ていきましょう。
- ターゲット国・エリアに情報が届かない
- 魅力的な商品・体験プランの設計ができていない
- 多言語対応の遅れ
- 決済・通信環境・文化差など、受け入れ体制の不備
ターゲット国・エリアに情報が届かない
「海外からお客様が来ない」という悩みの一因は、そもそも発信した情報がターゲット国のユーザーに届いていないことです。自社サイトやSNSで日本語だけ情報発信しても、海外の旅行者には届きません。
また、国・地域によって旅行者が使う情報源は大きく異なり、中国ではWeChatや小紅書(RED)で情報収集する一方、欧米圏ではInstagramなどビジュアル重視のSNSが一般的です。
ターゲットとする国ごとに最適なチャネル・言語で情報発信しないと、見つけてもらえないのが現状です。そのギャップを埋める戦略立案が必要となります。
魅力的な商品・体験プランの設計ができていない
訪日外国人にとって魅力に感じられる商品や体験プランを用意できていないケースも課題です。日本ならではの特色が伝わらない商品構成や、現地語で魅力が伝わるプラン名・説明が不足していると、せっかく来日した旅行者の興味を引けません。
また、コロナ前と比べて欧米豪からの観光客が増え、長期滞在や文化体験志向の消費傾向が強まっています。単なる買い物(モノ消費)だけでなく「体験価値(コト消費)」を求める訪日客が増えており、魅力的な体験メニューの設計が不可欠です。
日本でしかできないユニークな体験を盛り込むことで、旅行者の心を掴むことができます。
多言語対応の遅れ
外国語での案内表示や接客対応が追いついていないことも大きな課題です。店頭スタッフが英語や中国語で十分説明できない、予約ページが日本語のみ、といった状況では外国人旅行者は戸惑ってしまいます。
実際、訪日客は「スタッフとコミュニケーションが取れないこと」が不便だと感じている方が多いようです。
案内看板やメニューの多言語表記が少ない点も指摘されており、言語の壁がスムーズな受け入れの妨げとなっています。言葉の壁による不安は旅行全体の満足度低下にもつながりかねません。
決済・通信環境・文化差など、受け入れ体制の不備
現地での受け入れ環境が十分でないことも課題です。特にキャッシュレス決済やフリーWi-Fiの整備状況は訪日客の利便性に直結します。
地方では海外発行のクレジットカードが使えない、公共Wi-Fiが整備されていないといった声が多く、快適な旅行体験の妨げとなっています。実際に訪日外国人が旅行中に最も不便に感じることとして、「Wi-Fi環境の不備」と挙げる人が多いです。
また、宗教や食習慣など文化の違いへの配慮が欠けると、不満につながる場合もあります。現地で安心して過ごせる受け入れ体制の整備が必要です。
インバウンド集客に向けた準備と戦略設計

上記の課題を克服し効果的に訪日客を呼び込むには、事前の準備と戦略設計が重要です。
ターゲットとする国や顧客層を明確に定め、旅前・旅中・旅後のカスタマージャーニーを描き、自社ならではの強みを生かした体験を用意しましょう。以下に具体的なステップを解説します。
- ターゲットとペルソナを明確にする
- 旅マエ・旅ナカ・旅アトのカスタマージャーニーを描く
- 自社の強みを「コト体験」に翻訳する
- 多言語・決済・Wi-Fiなどの受け入れ環境を整える
ターゲットとペルソナを明確にする
まずは、どの国・地域からどんな旅行者を呼び込みたいのかターゲット設定を行います。国によって文化的背景や旅行目的、使うメディアも異なるため、ペルソナを描くことで戦略の方向性が定まります。
また、ペルソナ設定により訴求すべきポイントや適切なメディア選定も明確になるでしょう。例えば、中華圏の若者富裕層なのか、欧米豪のファミリー層なのかによって訴求ポイントも変わってきます。
インバウンド集客ではターゲット国ごとに文化やニーズに合わせた戦略立案が不可欠だといわれています。誰に何を提供するのか明確にすることが、施策の出発点です。
旅マエ・旅ナカ・旅アトのカスタマージャーニーを描く
訪日客が認知から訪問、そして帰国後に至るまでの一連のプロセスを設計しましょう。特に個人旅行の増加に伴い、旅マエ(来日前)と旅ナカ(滞在中)における顧客接点の設計が重要になっています。
旅マエではSNSや検索を通じて興味を喚起し予約に繋げ、旅ナカでは現地で迷わず楽しんでもらえる情報提供や導線作りが必要です。
旅アト(帰国後)には、口コミ投稿のお願いや再訪を促すフォローアップまで計画に入れれば、口コミによる次の集客やリピーターの獲得にも繋がります。
自社の強みを「コト体験」に翻訳する
インバウンド集客では、「モノ消費」よりも「コト消費」を意識した商品設計が鍵です。単に商品を売るのではなく、自社の強みや地域資源を活かした体験型コンテンツを提供しましょう。
例えば、茶葉を売る店なら茶道体験をセットにする、神社なら伝統衣装での写真撮影プランを設ける、といった具合です。
商品やサービスを通じて得られる体験に価値を見出す動きを「コト消費」と呼びますが、日本でしかできない本物の体験や伝統文化の体感こそが訪日客の満足度を高めます。自社ならではの魅力を体験プランに落とし込み、記憶に残る思い出を提供しましょう。
多言語・決済・Wi-Fiなどの受け入れ環境を整える
海外からのお客様を迎える準備として、言語やインフラ面の環境整備も欠かせません。ウェブサイトや予約システム、店頭表示を多言語化し、主要なクレジットカードやモバイル決済が使えるようにしましょう。無料Wi-Fiの提供も検討してください。
こうした決済・通信インフラの整備は快適な旅行体験に直結するため、標準化と導入が喫緊の課題とされています。
加えて、礼拝スペースの確保や食の禁忌への対応などの宗教的・文化的な配慮も大切です。細やかな気配りで「また日本に来たい」と思ってもらえる環境を整えましょう。
オンラインでできるインバウンド集客方法

訪日客の多くは旅行前の情報収集にインターネットを活用します。そのため、オンライン上での露出を高めることはインバウンド集客の要です。ここではデジタルで実践できる集客方法を紹介します。
- Googleマップ・MEO対策で「旅ナカ検索」に入り込む
- 自社サイト・ブログ・SEOで公式情報を多言語発信する
- SNS・動画プラットフォーム運用を行う
- 広告活用で指名外ユーザーにアプローチ
- 海外の旅行予約サイト・予約サイト・口コミサイトを活用する
Googleマップ・MEO対策で「旅ナカ検索」に入り込む
旅行中、訪日客は近くの飲食店や観光スポットをGoogleマップで検索することが一般的です。Googleマップ上で自店が上位に表示され、適切な情報が整っているようにする施策をマップエンジン最適化(MEO対策)と言います。
実際、多くの外国人観光客はGoogleマップを使って行き先を探し、口コミを参考に訪問先を決めることも多いです。
そのため、営業時間やメニューを多言語で掲載し、写真も充実させておくことで他店と差別化でき、検索順位やアクセス数、来店数の向上に繋がります。ポジティブな口コミが増えるよう運用し、ネガティブな口コミには真摯に対応することも大切です。
自社サイト・ブログ・SEOで公式情報を多言語発信する
自社の公式ウェブサイトやブログも、訪日客への重要な情報源です。英語や中国語(繁体字・簡体字)、韓国語などターゲットに応じた多言語のWebサイトを用意しましょう。
訪日外国人向けのサイトは企業の「顔」として機能するため、最低限英語対応は必須です。また、現地の検索エンジンや検索習慣に合わせたSEO対策も行い、旅行者が調べそうなキーワードで自社情報がヒットするようにします。
ブログでは観光情報や体験レポートなど有益なコンテンツを多言語で発信し、公式な最新情報を届けることで訪日客の信頼を得られます。
SNS・動画プラットフォーム運用を行う
集客においてSNSや動画での情報発信は欠かせません。旅先選びの際にInstagramやTikTokなどSNS上の写真・動画からリアルな口コミや体験談をチェックする外国人は非常に多いです。
そこで、自店の魅力が視覚的に伝わる投稿を定期的に行い、「ここに行ってみたい!」と思わせる工夫をしましょう。例えば、写真映えする料理や風景の写真、体験シーンの動画などは反響を得やすいコンテンツです。
必要に応じてインフルエンサーと提携し、発信力のある投稿で認知度を高めるのも効果的です。ハッシュタグの呼びかけなどで、お客様自身による発信を促すことも有効です。
広告活用で指名外ユーザーにアプローチ
SNSや検索エンジンの広告を活用すれば、まだ自店を知らない層にもリーチできます。特に訪日前のユーザーにリーチするには、旅行関連のキーワードに合わせた検索連動型広告が有効です。
例えば、Google広告で「Visit Japan」などのキーワードを設定し、特定の国・地域のユーザーに向けて広告配信すれば、効率的にサイトへ誘導できます。
SNS広告では、地域や興味関心を絞ったターゲティング配信で、自社を知らなかった層にアプローチ可能です。限られた予算でも広告を組み合わせて活用することで、新規顧客の開拓につながります。
海外の旅行予約サイト・予約サイト・口コミサイトを活用する
海外の旅行予約サイトや口コミサイトにも積極的に情報を掲載しましょう。訪日客の多くは、母国で使い慣れた予約サイトや口コミサイトで情報収集と予約を行っています。
自店もそれらに登録し、営業時間や住所などを常に最新に保ちましょう。また、来店後にはレビュー投稿を促して評価を蓄積し、低評価には丁寧に対応することが大切です。
評価の高い店舗はそれだけで「行ってみたい」と思わせる強力な集客力となります。
オフラインでできるインバウンド集客方法

オンライン施策と併せて、現地での受け入れ態勢づくりやオフライン施策も重要です。外国人旅行者が現地で困らず快適に過ごせるよう環境を整えることは口コミ評価の向上にもつながります。ここでは現地で実践できる方法を紹介します。
- 多言語対応の看板・メニュー・パンフレットの整備
- 地域の観光協会・自治体・観光地域づくり法人との連携による周遊導線づくり
- 旅行中に喜ばれる情報提供
- 店舗・施設の「写真映え」「SNS映え」を意識した演出
多言語対応の看板・メニュー・パンフレットの整備
店頭や施設内の表示物を多言語対応にして、言葉の壁を取り除きましょう。入口の案内板や館内マップ、飲食店のメニューなど、主要な表示は英語版を用意し、中国語や韓国語も可能な範囲で対応すると親切です。
また、外国人の視点でサービスを見直し、券売機の操作方法や飲食店での注文スタイルなどをピクトグラムの活用や手順の簡素化によって直感的に伝える工夫も有効です。
日本人には当たり前のことでも外国人には理解しにくい場合があるため、視覚的に分かりやすい案内やシンプルな利用手順を心がけましょう。紙の多言語パンフレットを用意しておくと、持ち帰ってもらえて情報の再確認にも役立ちます。
地域の観光協会・自治体・観光地域づくり法人との連携による周遊導線づくり
自店だけでなく地域全体で訪日客を歓迎する体制を整えることも大切です。地元の観光協会や自治体、観光地域づくり法人と連携し、地域内の周遊ルートや滞在プランを提案できれば、訪日客の滞在時間と消費額を伸ばすことができます。
地域特有の観光資源や体験プログラムを組み込んだ周遊モデルコースを作成し、マップやウェブ上で共有しましょう。
インバウンド需要は都市部だけでなく地方にも波及効果が期待されており、地域ぐるみで外国人を受け入れる体制作りが必要だと指摘されています。官民一体となった周遊導線づくりが、地域全体の集客力アップにつながります。
旅行中に喜ばれる情報提供
外国人観光客が滞在中に困りがちな点を先回りしてサポートすることで、満足度を高められます。例えば、観光案内所や店頭で多言語の地図や交通案内を配布したり、近隣のおすすめスポット情報を提供したりする取り組みです。
主要観光地への行き方や最寄りの両替所・ATMの場所など、知っておくと役立つ情報を案内してあげると喜ばれます。また、無料の観光ガイドアプリや翻訳アプリの使い方を教えてあげるのも良いでしょう。
現地での不安や不便を取り除く気配りが、「日本に来てよかった」というポジティブな印象につながり、口コミでも高評価を得やすくなります。
店舗・施設の「写真映え」「SNS映え」を意識した演出
店舗や施設自体を訪れたくなる「映える」魅力づくりも重要です。外国人観光客は旅先で印象的な写真を撮り、それをSNSにシェアする傾向があります。
内装や商品ディスプレイに和風の美しい意匠を凝らしたり、記念撮影用のフォトスポットを設置したりすることで、思わず写真に収めたくなる演出をしましょう。
例えば、店内にフォトスポットを設けてハッシュタグ付きで撮影を促せば、思わず投稿したくなるでしょう。SNSで話題になれば「写真を撮りに行きたい」と思わせる強力な宣伝効果が期待できます。
インバウンド集客を支えるツール・サービス

インバウンド集客では、ツールやサービスの活用を検討しましょう。多言語対応を手助けしてくれるサービスや、Googleマップや口コミを管理するツール、SNS運用を効率化するツール、人流データを分析して戦略立案に役立てるサービスなどが各種登場しています。
自社の課題に合わせてこうしたツールを導入すれば、限られた人員でも対策を実施できます。
- 多言語Webサイト・予約システム
- インバウンド向けMEO/口コミ管理ツール
- SNS運用・広告配信ツール
- 人流データ・位置情報データを活用したエリア分析ツール
多言語Webサイト・予約システム
言語の壁を越えるには、多言語対応のWebサイトや予約システムを導入するのが近道です。最近では、既存のサイトに多言語翻訳機能を追加できるサービスや、予約フォームを自動翻訳して表示してくれるシステムも登場しています。
英語や中国語でのオンライン予約に対応しておけば、海外からでもスムーズに予約を受け付けることができます。
また、メニューや利用案内をQRコード経由で多言語表示できるサービスを活用すれば、紙のメニューを何カ国語も用意しなくても簡単に多言語対応が可能です。自社のデジタル対応を強化し、言葉のハンデを取り除きましょう。
インバウンド向けMEO/口コミ管理ツール
Googleビジネスプロフィールや口コミ対応を効率化するツールも有用です。複数のレビューサイトを一括管理できるツールを使えば、口コミの見落としを防げます。新着口コミの通知や自動翻訳機能が備わったものもあり、素早い多言語対応が可能です。
こうしたサービスを活用し、オンライン上の評価管理を徹底することで、信頼度の向上と集客力アップにつながるでしょう。
なお、複数店舗を運営する場合は、店舗ごとのMEO情報を一括更新できるサービスもあります。口コミ分析機能が備わったツールで低評価の原因を把握すれば、サービス改善にも役立つでしょう。
SNS運用・広告配信ツール
複数のSNSアカウントを効率よく運用するには、専用の管理ツールが役立ちます。投稿スケジュールを事前に設定し、自動で各国のピーク時間に投稿したり、各国語の投稿をまとめて管理したりできるプラットフォームがあります。
また、SNS広告の配信を最適化するツールもあり、AIによる予算配分やターゲティング支援で初心者でも効率的に運用することが可能です。複数の広告チャネルを統合管理できるプラットフォームを使えば手間も省けるでしょう。
限られた人員でもSNSマーケティングを回しやすくなるでしょう。投稿の自動翻訳機能や分析機能を備えたサービスも多く、運用の質を高めるのにも役立ちます。
人流データ・位置情報データを活用したエリア分析ツール
訪日客の動向をデータで捉えて戦略に活かすこともできます。人流データ分析ツールを使えば、スマートフォンの位置情報データから、特定エリアにいつ・どんな属性の人がどれくらい訪れているかを可視化できます。
こうしたデータを参考にすれば、強化すべきターゲット市場やエリアを見極めるなど、エビデンスに基づいた戦略立案が可能になります。
人流分析ならDatawise Area Marketer
Datawise Area MarketerはNTTドコモのGPSデータを統計化し、国籍や年代別の来訪者数、滞在時間、回遊ルートを地図上で直感的に可視化できるクラウドツールです。観光地や店舗周辺の今の人流を数分単位でリアルタイム把握でき、無料トライアルもご用意しております。
訪日客が多い曜日や時間帯をデータで把握すれば、スタッフ配置や販促タイミングを最適化することもできます。相関分析機能でイベント開催時の効果検証も簡単に行え、インバウンド施策のPDCAを加速させることが可能です。
複数店舗をまとめて比較できるダッシュボードもあるため、チェーン展開する事業者の方にもご利用いただきやすいツールです。
まとめ
インバウンド集客は、事前の戦略設計から現地での受け入れ体制、オンライン・オフライン両面の施策推進、そしてそれらを支えるツールの活用まで、総合的な取り組みが求められます。
政府も2030年までに訪日客6,000万人を目指す目標を掲げており、今まさにインバウンド施策に注力すべき時期と言えるでしょう。本記事で紹介した方法や事例を参考に、自店・自地域に合ったインバウンド対策をぜひ実践してみてください。おもてなしの心で、世界中からのお客様を笑顔で迎えましょう。






