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EBPMとは?ロジックモデルの活用や具体的な進め方、自治体の成功事例などを徹底解説

EBPM(Evidence-Based Policy Making)とは、データや根拠(エビデンス)に基づいて政策を立案・実行する手法です。少子高齢化や災害対策など自治体が直面する課題が深刻化する中で、EBPMに注目が集まっています。
本記事ではEBPMの定義や重要性、具体的な進め方やロジックモデルの活用方法、自治体の成功事例を徹底解説します。これを読めば、自治体におけるEBPMの導入手順やロジックモデル、成功事例がわかり、自治体でEBPMを活用するイメージがつかめるはずです。
EBPMとは根拠に基づく政策立案のこと

EBPMはEvidence-Based Policy Makingの略で、「エビデンス(根拠)に基づく政策立案」を意味します。EBPMの頭文字Eが示すとおり、根拠となるデータの収集と活用が政策立案の鍵を握ります。政策の手段と目的との論理的なつながりを明確にし、それを裏付けるデータ等の根拠(エビデンス)を追求する取り組みです。
政策実施後には目的が達成されたか検証することも求められます。経験や勘に頼らず客観的なエビデンスを根拠に政策を決定・遂行することで、政策の有効性や効率性を高め、行政への信頼性向上にもつながります。
EBPMが今注目されている理由

EBPMが今注目される背景には、自治体を巡る社会環境の変化やICTの発展、そして政府の推進など主な要因は次の通りです。ここでは以下の3つについて紹介します。
自治体を取り巻く環境の変化
自治体を取り巻く環境として、外部環境と内部環境の双方で大きな変化が起きています。以下では外的環境と内的環境の変化について説明します。
- 外的環境の変化
- 内的環境の変化
外的環境の変化
少子高齢化や過疎化による人口減少は、自治体にとって大きな外的環境変化です。従来の経験則に頼った政策では持続可能な行政運営を維持することが難しくなり、限られた財源を費用対効果を考慮して配分するためにEBPMが重要視されています。
統計データや調査結果など客観的根拠に基づいて施策を検討することで、無駄な支出を抑え、限られた財源を最大限に活用した効果的な政策が実現できます。
内的環境の変化
一方、自治体内部では職員数減少による人手不足や組織の硬直化、財政悪化など複合的な課題が見られます。成果を正しく測定できる評価制度の不備もあり、課題解決が難しい状況です。
限られた行政資源を効率的に活用し、地域課題に迅速に対応するには、EBPMのように根拠に基づき合理的な対策を講じる仕組みが欠かせません。
情報通信技術(ICT)発展とビッグデータの利用
近年のICT(情報通信技術)の進展によって、膨大なデータの収集・分析が格段に容易となり、ビッグデータを活用できる環境が整いました。
自治体でも国勢調査などの統計データにセンサーやIoT機器のリアルタイムデータを組み合わせて分析できるようになり、データに基づく迅速で精度の高い政策立案が可能になっています。
政府によるEBPM普及の後押し
EBPMの普及を全国的に後押ししているのが、政府の取り組みです。政府は2017年に「統計改革推進会議 最終とりまとめ」を公表し、政策課題を迅速かつ正確に把握し有効な対応策を検討する必要性を示しました。
さらに「EBPM推進委員会」を設置して推進体制を整備し、自治体向けにEBPMガイドブックを公開するなど、EBPMの普及・浸透に努めています。
EBPMで使われる主な分析手法

EBPMを進める際には、さまざまな分析手法が活用されます。ここでは代表的な3つの手法について解説しましょう。
- ロジックモデルの作成
- データやエビデンスによる政策立案
- ランダム化比較実験
ロジックモデルの作成
ロジックモデルは、政策目的と手段の因果関係を図解したモデルです。インプットからアウトプット・アウトカムへの流れを整理します。文部科学省が「ロジックモデル作成マニュアル」を策定し、各自治体で活用が進められています。
データやエビデンスによる政策立案
EBPMでは、統計データや行政記録、アンケート結果など様々なデータを政策立案に活用します。例えば人口統計や経済指標から課題を定量的に把握し、根拠をもって政策の必要性や効果を検証する流れです。
民間が持つビッグデータやAI分析結果もエビデンスとして活用され、より精度の高い意思決定が可能になります。
ランダム化比較実験
ランダム化比較実験(RCT)とは、新施策の効果を検証するため対象を無作為に分け、施策実施群と非実施群で結果を比較する手法です。
岡山県ではアンケート調査の封筒サイズを大・小の2種類用意し、無作為に送り分けて回収率の差を検証しました。結果、小型封筒でも回収率が同等と確認でき、封筒小型化によるコスト削減が実現しています。
EBPMの具体的な進め方

EBPMを現場で実践する際には、次のような手順を踏むことが一般的です。ここでは政策立案のプロセスを6つのステップに分けて解説します。
- 問題や課題の特定と明確化
- 計画や仮説の設定
- データ収集
- データ分析
- 最適な政策を立案・提案
- 実行した施策効果の評価
①問題や課題の特定と明確化
まず、解決すべき問題や課題を明確にすることから始めます。現状を把握し、統計データや現場の声などを通じて課題を洗い出します。
課題の規模(影響を受ける人口や地域)や深刻度を定量的に捉え、政策で対応すべき対象を絞り込みます。課題を具体化することで、後のデータ収集や分析の方向性が定まり、効果的なEBPMの土台が築かれます。
②計画や仮説の設定
次は、解決策の計画を立て、その効果に関する仮説を設定するステップです。課題を解決するための目標(何をどの程度改善したいか)を定め、その目標を達成するために考えられる政策手段を検討します。
各政策手段が目標にどう寄与するかを論理立てて仮説化し、ロジックモデルに落とし込んでおくと、この後の検証がスムーズです。仮説を明確にすることで、後のデータ分析で何を確認すべきかがはっきりします。
③データ収集
次に、仮説を検証するために必要なデータを収集します。政策に関連する統計データや行政データ(人口統計、財政データ、利用実績等)を入手しましょう。必要に応じてアンケート調査やヒアリングを実施し、新たなデータを収集することもあります。
他自治体や海外の事例、過去の研究結果などもエビデンスとして集め、仮説との関連を確認するのも有効です。信頼できるデータを集めることで、次の分析段階の精度が高まります。
④データ分析
収集したデータをもとに分析を行うステップです。統計手法や専門ツールを用いて、現状の傾向や問題の原因を探ります。仮説で立てた政策手段が目標達成に有効かどうか、データを用いて検証してください。
たとえば施策実施前後の指標を比較したり、相関関係や因果関係を分析したりします。ランダム化比較実験の結果もこの段階で統計的に評価されます。分析の結果、仮説が支持されれば次のステップへ進み、支持されない場合は計画を見直しましょう。
⑤最適な政策を立案・提案
データ分析の結果を踏まえて、最適な政策を立案・提案します。仮説が裏付けられた場合、その政策手段を具体的な施策としてまとめてください。複数の選択肢がある場合は、費用対効果や実現可能性を比較検討し、最も有効な施策を選びます。
政策案には達成目標や期待される効果、根拠データを盛り込み、説得力のある提案書を作成します。EBPMを経ているため、客観的エビデンスに基づく提案となり、政策決定者への説明や合意形成も容易になるでしょう。
⑥実行した施策効果の評価
最後に実行した施策の効果を評価します。施策の実施後に、当初設定した目標がどの程度達成されたか、収集したデータで検証をしてください。KPIや住民アンケート結果などを用いて、施策の有効性・効率性を定量的に測定します。
目標未達や想定外の結果があれば、その原因を分析し、政策の改善につなげる流れです。評価結果は次の政策立案やPDCAサイクルにフィードバックし、継続的な行政サービスの向上に役立てます。
自治体でEBPMを推進するポイント

自治体がEBPMを推進する上で、押さえておきたいポイントがあります。以下の4点について見ていきましょう。
- ロジックモデルなどを活用し「目的」「改善策」を明確化する
- エビデンスを適切に活用する
- 現場職員の育成やスキル習得の環境を整える
- 人材を確保する
ロジックモデルなどを活用し「目的」「改善策」を明確化する
EBPM推進には、まず政策の目的と、それを達成するための改善策(施策)を明確にすることが不可欠です。ロジックモデルなどのフレームワークを活用することで、政策目的と手段の因果関係を整理できます。
何を達成したいのかを明確にし、そのために必要なインプット(資源)や具体的な活動、期待されるアウトプット(成果)を論理立てて洗い出しましょう。目的と改善策が明確になることで、組織内で共通認識が生まれ、施策の方向性がブレなくなります。
エビデンスを適切に活用する
EBPMでは、集めたエビデンスを正しく解釈し、適切に活用することが重要です。データに偏りや誤りがないか確認し、統計的に有意な結果かを判断します。
都合の良いデータだけを採用するのではなく、客観性・信頼性の高いエビデンスに基づいて意思決定する姿勢が求められます。
また、エビデンスの背景にある前提条件や、数字に表れない要因にも注意を払い、総合的に判断することが大切です。適切なエビデンス活用により、施策の妥当性について説得力を持って説明でき、施策への納得感も高まります。
現場職員の育成やスキル習得の環境を整える
EBPMを定着させるには、政策立案に関わる現場職員の育成とスキル向上が欠かせません。データ分析や統計の基礎、ロジックモデルの作成手法などに関する研修を実施し、職員のリテラシーを高めます。
現場の職員が自らデータを活用できる環境(分析ツールやマニュアルの整備)を整え、学んだスキルを実践で試せる機会を設けることも重要です。職員がエビデンスに基づく発想で業務に取り組めるよう支援することで、組織全体のEBPM推進力が向上します。
人材を確保する
EBPMを推進するには、データ分析や政策評価に長けた人材の確保も重要です。自治体内部に統計解析やICTに強い人材が不足している場合、専門知識を持つ職員を採用・登用したり、他部署からの人材を育成する取り組みが求められます。
国や民間企業、大学などと連携し、データサイエンティストや有識者のアドバイスを受ける体制を作ることも有効です。人材を充実させることで、EBPMに必要な分析力・実行力が備わり、継続的にエビデンスに基づく政策立案が可能になります。
【分野別】自治体のEBPM成功事例5選

ここからは、自治体がEBPMにより成果を上げた分野別の成功事例を5つ紹介します。
- 防災・医療分野:仙台市
- 子ども・福祉分野:岐阜県関市
- 交通安全・まちづくり:栃木県宇都宮市
- 教育分野:広島県福山市
- 行政の運営:岡山県
①防災・医療分野:仙台市
仙台市ではコロナ禍で救急医療が逼迫し、消防(救急)と医療機関の連携強化が急務でしたが、当初はデータを示さず受け入れを要請しても効果が上がらなかったようです。
そこで打った手が、救急搬送の応需率を統計データから算出し、週次でモニタリングする仕組みの導入です。
データに基づく協議の結果、受け入れ体制拡充に向けた実効性ある対策が講じられ、応需率の改善を確認できました。現在もこの仕組みを継続し、持続可能な救急医療体制の構築に役立てています。
出典:総務省統計局 Data StaRt「消防×医療機関の緊密かつ強固な連携体制の構築 ~EBPMの推進による限られた医療資源の有効活用を目指して~」
②子ども・福祉分野:岐阜県関市
関市では子ども医療費助成の対象年齢引き上げを検討しましたが、コストが不透明で実現していませんでした。
そこで、人口推計と医療費データを基に、18歳まで対象を拡大した場合のコストを予測するモデルを作成しました。その結果、信頼性の高いデータに基づく検討が可能となり、年齢引き上げが実現しています。
実施後も2023年度の実績と予測値の誤差は±5%以内に収まり、予測モデルの精度の高さが確認されています。
出典:総務省統計局 Data StaRt「予測モデルを根拠とした子ども福祉医療費助成年齢要件の検討」
③交通安全・まちづくり:栃木県宇都宮市
宇都宮市では、住民協力で車の急ブレーキ等のヒヤリハットデータを収集し、ヒートマップで可視化して潜在的危険箇所を洗い出しました。
その情報を住民に共有し、地域主導で現地確認や対策の検討を行ったそうです。その結果、危険箇所への看板設置やハンプ設置などの対策が進められました。今後も官民協働で安全対策を継続する方針です。
出典:宇都宮市「ヒヤリハットデータを活用した地域参加型交通安全対策」
④教育分野:広島県福山市
福山市では、教育分野でEBPMを推進しています。
例えば、市内の学力テストやアンケートなど教育データを一元化し、児童生徒の学習状況を可視化する取り組みを行いました。集めたデータを分析して学力向上のボトルネックを特定し、授業方法の改善や個別指導の充実といった改善策を講じています。
また、データに基づいて教育施策の効果を検証し、PDCAサイクルを回す仕組みを構築しています。これにより、教員の指導力向上や児童生徒の学力向上につながったと報告されています。
出典:福山市「行政版デジタル化実行計画」
⑤行政の運営:岡山県
岡山県では、EBPMで行政サービスのコスト削減に取り組みました。県民アンケートの郵送調査で、従来使っていた大型封筒を小型封筒に切り替えても回収率が維持できるか実証実験で検証しています。
当初、小型封筒では回収率が劣る懸念もありましたが、封筒の色を黄色にして再試行した結果、回収率に差がないことが確認されました。そのため、調査用封筒を小型(黄色)に切り替え、年間の郵送費削減につながっています。
効果が同等であれば費用の低い方法を採用するという、EBPMに基づく合理的な意思決定の好例です。
出典:総務省統計局 Data StaRt「調査用封筒の切り替えに向けた検証」
各自治体で共通する課題と失敗しないための対策

自治体がEBPMに取り組む際の共通課題は、データ不足や縦割り管理でデータ共有が難しい点です。庁内のデータ連携基盤を構築したり、統計データの整備・オープンデータ化を進めることで対応できます。
また、人材不足や組織体制の不備も課題です。データ分析の専門人材を育成・確保し、横断的なEBPM推進チームを設置するといった対策が必要です。
さらに、組織文化としてエビデンスに基づく意思決定を定着させることが重要です。成功事例を共有してEBPMの有効性への理解を広げ、トップが旗振り役となって推進することで、失敗を防ぎつつ着実に浸透させられるでしょう。
EBPMに取り組む際にはDatawise Area Marketerの活用がおすすめ
エビデンスを効率的に収集・分析するには、民間の位置情報データや商圏統計を簡単に統合できる「Datawise Area Marketer」の活用が効果的です。住民の移動傾向や来訪特性を可視化することで、施策対象エリアの需要を客観的に把握でき、ロジックモデルの仮説精度が向上します。
さらに、ダッシュボード機能で成果指標を継続的にモニタリングできるため、実行後の評価もスムーズとなり、職員の分析負荷を抑えながらEBPMを定着させられるでしょう。自治体統計と連携すれば、課題抽出と効果検証を一気通貫で行えます。
まとめ
EBPM(エビデンスに基づく政策立案)は、客観的なデータや根拠を活用して政策の質を高める手法です。現代では自治体を取り巻く環境変化やICTの進展、政府の後押しもあり、EBPMの重要性は一層高まっています。
本記事ではEBPMの基本や進め方、自治体の成功事例を解説しました。ロジックモデルによる目的と手段の明確化、適切なエビデンス活用、職員の育成や人材確保などを組み合わせて推進すれば、効果的で効率的な政策立案が可能となるでしょう。
エビデンスに裏付けられた政策は説得力があり、行政への信頼性向上にもつながります。ぜひEBPMの考え方を取り入れて、より良い自治体運営に役立ててください。






