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観光DXとは?観光庁が掲げる4つのポイントや実証事業、観光振興事業費補助金などの支援について徹底解説!

近年、観光分野ではインターネットやデータを活用した「観光DX(デジタルトランスフォーメーション)」への注目が高まっています。

人手不足や低生産性といった課題を抱える観光業界では、デジタル技術による業務効率化や収益性向上が重要なテーマです。旅行者の利便性を高める取り組みも、今や欠かせない要素となっています。

本記事では、観光DXの基本的な考え方から、観光庁が掲げる4つの重点ポイント、導入のメリット・デメリット、活用できる補助金制度までを整理します。あわせて、最新の実証事業や具体的な成功事例を、実務に役立つ視点で解説します。

観光DXとはデジタル技術活用を駆使した変革への取り組み

観光客

「観光DX」とは、デジタル技術とデータ活用によって、観光地経営や観光体験を抜本的に変革する取り組みです。

単に予約システム等を導入して業務効率化を図るだけでなく、データ分析の結果を基に、新たな戦略の立案やビジネスモデル創出といった抜本的な変革を行う取り組みと位置付けられています。

観光地では、地域や関係事業者が連携し、地域の実情に応じて課題解決に向けたデジタル化を進めることが大切です。観光DXの推進によって旅行者に新たな価値を提供し、地域経済の持続的な発展に繋げることが期待されています。

観光庁が提示するDX推進4つのポイント

データを見せる人

観光庁は、インバウンド需要を持続的な成長につなげるため、DXを軸とした4つの重点ポイントを掲げています。

  • 旅行者の利便性向上・周遊促進
  • 観光産業の生産性向上
  • 観光地経営の高度化
  • 観光デジタル人材の育成・活用

中でも最初の柱となるのが、訪日旅行者の体験価値を高め、地域内での回遊や消費を促す「旅行者の利便性向上・周遊促進」です。ここから具体的に見ていきましょう。

①旅行者の利便性向上・周遊促進

旅行者の旅を快適にし、各地を巡りやすくするための取り組みです。たとえば、宿泊施設や交通機関、体験プログラムの予約・決済をワンストップで行える地域共通サイトを構築すれば、旅行前から計画をスムーズに立てられます。

また、観光情報の多言語化や旅行者の嗜好に応じたスポットのレコメンド提供によって周遊を促すことが可能です。DXを活用して旅行者の利便性を高めることが、滞在時間や消費額の増加にもつながるとされています。

②観光産業の生産性向上

観光事業者の業務効率を上げ、生産性を高める取り組みです。例として、ホテルや旅館で顧客予約管理システム(PMS)を導入して予約情報や顧客情報を一元管理すれば、フロント業務や販売管理が効率化されます。

また、PMSやOTAから得られる予約データをAPIで連携し、地域全体で在庫・価格情報を共有することで広域的な収益管理(レベニューマネジメント)を実現する動きもあります。

これらのDX施策により従業員の負担軽減や人手不足の緩和が期待でき、勘や経験に頼らずデータに基づいて経営判断を下すことが可能になるでしょう。

③観光地経営の高度化

地域の観光地全体を、データに基づき戦略的に経営する取り組みです。旅行者の移動データ・宿泊データ・消費データなどを収集・分析し、科学的根拠に基づくマーケティングや戦略立案を行うことが重要になります。

たとえば、観光地域づくり法人(DMO)がDMP(データ管理プラットフォーム)を活用し、旅行者の行動データから再訪促進のためのCRM戦略を立案するといった手法が考えられます。

デジタル技術を取り入れることで観光地全体を一つの組織のように捉え、最適な経営判断を行える体制を築くことが観光DXの鍵となります。

④観光デジタル人材の育成・活用

観光分野でDXを推進するための人材を育て、適切に配置・活用する取り組みです。産学連携による研修やリカレント教育で観光デジタル人材の育成を支援し、必要に応じて外部から専門人材を招へいするといった施策が取られています。

特にDMOや自治体では、ITやデータ分析に明るい人材を配置してDX推進の司令塔とし、組織全体のデジタル対応力を高めることが重要です。

人材育成と登用の双方から体制を整えることで、観光DXの取り組みを持続的に拡大していくことができます。

観光DXのメリット

スマホを操作する女性

観光DX導入による主なメリットは以下の3点です。

  • 観光マーケティングにおける収益の最大化が可能
  • 旅行者の利便性や満足度の向上を実現できる
  • 新しいユーザー体験を創出できる

まずは、観光事業者・自治体双方に共通した観光マーケティングにおける収益最大化という視点から、そのメリットを見ていきましょう。

観光マーケティングにおける収益の最大化が可能

デジタル技術の活用により、データに基づいたマーケティング戦略を展開できるため、観光事業の収益性を高められます。

たとえば、予約状況や顧客属性のデータを分析して需要予測を行えば、適切な価格設定で無駄な空室を削減でき、SNS等で効率的に宣伝すれば販促コストを抑えて集客効果を高められます。

勘や経験に頼らないデータドリブンなマーケティングへ転換することで、売上の最大化が図れるとされています。

旅行者の利便性や満足度の向上を実現できる

観光DXは旅行者の体験価値を向上させる効果があります。宿泊先や交通チケット、体験予約が事前に完結すれば現地での手間が省け、さらにキャッシュレス決済が充実していれば現金を持たずスマートに支払えるため満足度が高まります。

このようにサービス品質を底上げすることで旅行者の満足度向上に直結し、口コミ評価の改善や再訪意向の増加が期待できるでしょう。

新しいユーザー体験を創出できる

デジタル技術を活用することで、従来になかった新しい観光体験を生み出すことができます。VRやARで史跡を当時の姿で再現したり、ゲーム性を取り入れて街歩きを楽しめるようにするなどの試みが各地で始まっているようです。

DXによって実現する新たな体験価値は、旅行者に驚きや感動を与え、観光地の付加価値向上につながります

観光DXのデメリット

悩む男性

一方で、観光DXには導入前に理解しておくべき注意点もあります。ここでは、観光事業者・自治体双方に共通する視点として、特に押さえておきたい代表的なデメリットを2点紹介します。

  • 短期的なスパンでの成果は現れにくい
  • 導入コストが必要

短期的なスパンでの成果は現れにくい

デジタル化の効果はすぐには現れず、一定の期間と継続的な取り組みが必要です。システムを導入しても即座に利益に直結するわけではなく、まず現場に定着させて使いこなすまでに時間を要します。

たとえば、新しい予約管理システムを導入しても、スタッフが操作に習熟するまで効率化の実感が得られない可能性が高いです。

そのため、観光DXは短期的に成果を求めず、長期的な視野で段階的に取り組む姿勢が重要です。

導入コストが必要

DX推進にはシステム導入費用や人材育成費用など、一定の初期投資が不可欠です。中小規模の事業者にとって高額なソフトウェアや機器の導入費、コンサルティング費用などは大きな負担となりえます。

さらに、運用開始後も保守費やクラウドサービス利用料といったランニングコストが発生します。こうした費用面のハードルからDXに踏み出したくても断念するケースも多いのが現状です。

ただし、公的な補助金・助成金を活用することで費用負担を軽減することができる場合もあります費用対効果を見極めつつ、支援策も上手に利用して計画を進めることが大切でしょう。

観光DXに活用できる補助金制度

お金を受け取る男性

観光DXを進めるうえで、導入コストや初期投資が課題となるケースも少なくありません。観光DXを後押しする補助金・助成金制度として、主に次のものがあります。

  • 観光振興事業費補助金
  • IT導入補助金
  • 業務改善助成金
  • 事業再構築補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

注意事項として、補助金は公募期間が限られ、採択率やDX要件も制度ごとに異なります。事前に要件を確認したうえで計画的に活用しましょう。

観光振興事業費補助金

観光庁が実施する補助金で、観光DXに取り組む地域(DMOや自治体等)を支援する制度です。デジタルツールの導入やマーケティング強化、DX推進の専門人材による伴走支援にかかる経費の一部を国が補助します

公募で採択された事業に対して経費の一部(多くは2/3程度)を負担してもらえるため、地域ぐるみの大規模な観光DXプロジェクトを進める際には心強い支援策です。

IT導入補助金

中小企業・小規模事業者等のITツール導入を支援する代表的な制度です。ホテル・旅館の予約管理ソフト、飲食店のPOSレジ、観光施設の多言語音声案内システムなど、生産性向上に資するソフトウェアやサービスの導入費用の一部を補助します。

観光業界でも幅広く活用でき、初期費用の負担を軽減することでDX導入のハードルを下げる効果が期待できます。

業務改善助成金

業務改善助成金は、最低賃金の引き上げと生産性向上を同時に後押しする中小企業向け制度です。

観光分野ではセルフチェックイン機、キャッシュレス決済端末、勤怠管理クラウドなど労務負担を減らすDX設備や研修費を最大600万円まで補助するコースも用意されています

申請時には賃金引上計画書と業務改善計画書の提出が必要で、賃上げ実施を前提にDX投資を促す仕組みとなっています。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、コロナ禍で売上が減少した事業者が大胆な事業転換や新分野展開を図る際に最大1.5億円規模で支援する大型制度です。

宿泊施設がワーケーション対応の客室整備を行ったり、旅行会社がオンライン体験ツアーを開発したりする場合に、建物改修費・システム開発費・広告費などを2/3以内で補助する枠が活用されています。

採択には3~5年で付加価値額を向上させる事業計画が求められ、DXを伴う革新的挑戦を後押しします。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者が販路開拓等の取り組みを支援するための補助金です。観光関連の小規模事業者も対象となり、ホームページ作成、ネット広告出稿、予約システム導入、キャッシュレス決済端末の導入など販促や業務効率化に関わる経費の一部が補助されます。

比較的申請ハードルが低く、個人経営の宿や観光ガイド事業者などがDXの第一歩として活用しやすい制度です。商工会議所や商工会のサポートを受けながら申請できる点も魅力となっています。

令和7年度のモデル実証事業

データ

2025年度には観光DXの先進モデル実証事業が開始され、以下の3件が採択されています。

  • 山形県:DMPを活用した酒田市好循環モデル構築事業
  • 新潟県:定量データを用いたKPI因果モデルの策定実証事業
  • 沖縄県:観光戦略×データの宮古島モデル実証

ここでは、データ活用を軸に地域課題の解決や観光戦略の高度化を目指す、採択事業の概要を紹介します。まずは山形県の事例から見ていきましょう。

山形県:DMPを活用した酒田市好循環モデル構築事業

酒田市では、DMOが全国観光DMPと連携し、宿泊・交通・購買など約30種類のデータを一元管理しています。インバウンド客の属性別行動を可視化したうえで、「平均滞在時間+2時間」「客単価+15%」をKPIに設定し、AIによる周遊ルート提案と効果のリアルタイム検証を行いました。

成果を中長期ビジョンと連動させ、地域経済が循環するモデルの確立を目指した実証事業です。

新潟県:定量データを用いたKPI因果モデルの策定実証事業

県観光協会は、佐渡島および湯沢・魚沼エリアを対象に、アンケート調査やPOSデータを補完しながら定量指標を整備しました。来訪者数、消費額、SNS拡散度などをKPIに設定し、統計解析によって施策と成果の因果関係を検証しています。

たとえば、船便の増便が島内消費に与える寄与率を算出し、費用対効果の高い施策へ資源を再配分できる仕組みづくりを検証する事業です。

沖縄県:観光戦略×データの宮古島モデル実証

宮古島観光協会は、宿泊・航空・モビリティなどの既存データを集約し、BIダッシュボードで来島者の動向を可視化しています。混雑の閾値や環境負荷指標を設定し、旅マエ広告や旅ナカクーポンをABテストで最適化しました。

外部のデータサイエンス人材と協働し、成功施策を即座に戦略へ反映できる自走型のPDCA体制構築を目指す実証事業です。

【課題別】観光DXの事例

世界地図

最後に、観光DXに積極的に取り組んだ具体的な成功事例を課題別に紹介します。観光地域づくり、来訪・周遊の増加、生産性の向上という3つの観点で見ていきましょう。

  • 観光地域づくりに関する観光DXの事例
  • 来訪・周遊の増加に関する観光DXの事例
  • 生産性の向上に関する観光DXの事例

観光地域づくりに関する観光DXの事例

ここでは、広域連携によるデータ活用を進めた北陸地域の取り組みと、地域全体で観光データを共有した雲仙市の事例を紹介します。

  • 北陸インバウンド観光DX推進事業
  • 雲仙市観光全域データオープン化活用事業

北陸インバウンド観光DX推進事業

北陸3県(富山県・石川県・福井県)が連携して実施した大規模な観光DXプロジェクトです。3県にまたがるインバウンド旅行者の移動データ・消費データを収集してオープンデータ化し、そのデータに基づく広域共通の観光施策やマーケティングを展開しました。

行政・DMO・事業者間でデータを共有する基盤を構築し、分析結果をもとに新たな周遊ルートの提案やプロモーション強化を実施。地域を越えて観光データを活用する先駆的事例であり、広域で旅行者の消費拡大と周遊促進につなげた点が評価されています。

雲仙市観光全域データオープン化活用事業

長崎県雲仙市で実施された観光DX事業で、温泉地全体の観光消費拡大と生産性向上を目指した取り組みです。地域共通の観光サイトを構築して体験プログラム等のオンライン予約・決済を可能にし、宿泊施設や商店と連携して地域全体でデータを共有・分析しました。

地域一丸となって旅行者の消費拡大に取り組み、観光収益の最大化を図った点が特徴です。旅行者の趣味・嗜好に応じた体験プログラムの販売促進や、雲仙・小浜温泉の宿泊事業者間で生産性向上のための協力体制を築くなど、データを基盤に地域ぐるみで課題解決を図った好例と言えます。

来訪・周遊の増加に関する観光DXの事例

次に、旅行者の回遊性向上や域内消費の拡大につながった、箱根温泉と志賀高原の事例を見ていきましょう。

  • 快適な周遊、旅を満喫する箱根温泉DX事業
  • 志賀高原観光DX推進による域内経済の活性化実証事業

快適な周遊、旅を満喫する箱根温泉DX事業

神奈川県箱根町で実施されたDX事業で、観光客の満足度向上と交通渋滞の緩和を目的に行われました。

箱根全域の観光関連データを集約した「箱根観光デジタルマップ」を構築し、リアルタイムの交通状況・混雑情報を提供して観光客を分散誘導。さらに空いている時間帯やルートを提案しました。

旅行者が快適に周遊できる環境をデジタル技術で整え、旅行者の満足度向上と地域内消費の維持・向上を両立させた事例です。観光客の行動データを分析することでオーバーツーリズムの抑制にもつなげています。

志賀高原観光DX推進による域内経済の活性化実証事業

長野県山ノ内町の志賀高原エリアで行われた実証事業です。観光協会が中心となり、顧客情報を収集・活用する共通データ基盤を整備してCRM施策を展開し、地域経済の活性化を図りました。

公式Webサイトを刷新して宿泊とアクティビティの直販予約を可能にし、複数事業者間で顧客データを共有するプラットフォームも構築。地域全体で顧客情報をデータ共有し、一人ひとりに合わせたサービス提供やプロモーションを行うことで、域内経済の底上げにつなげた好例です。

生産性の向上に関する観光DXの事例

最後に、業務効率化と収益力強化を同時に実現した、全国基盤と城崎温泉の先進事例を紹介します。

  • 「日本観光振興デジタルプラットフォーム」構築事業
  • まち全体が一つの温泉旅館のDX化実現事業

「日本観光振興デジタルプラットフォーム」構築事業

公益社団法人日本観光振興協会が中心となって進めたプロジェクトで、全国共通の観光データ基盤を整備しました。

地域が共通で利用できる「全国観光DMP」と、そのデータを可視化・分析する高度化地域DMPを構築し、各地のDMO・自治体・事業者がこれらを活用してターゲット戦略やマーケティング施策を立案できる環境を作り上げました。

共通基盤の提供により各地域が低コストで高度なデータ分析を行えるようになり、生産性を高めつつ科学的な観光振興策を展開できる環境が整った点が大きな成果です。

まち全体が一つの温泉旅館のDX化実現事業

兵庫県豊岡市の城崎温泉で実施されたプロジェクトで、城崎温泉の宿泊施設や商店街を「まち全体が1軒の旅館」と見立ててDX化を進めました。

全ての旅館で予約・顧客管理システム(PMS)の統一導入を行い、地域共通の「豊岡観光DX基盤」を用いたCRMシステムも開発。これにより宿泊データの可視化・共有が実現し、地域ぐるみでのレベニューマネジメントやリピーター促進が可能となりました。

複数の旅館・店舗が足並みを揃えてデータを活用することで、業務効率化と観光消費額の向上に大きく貢献した先進事例です。

観光客の動向分析にはDatawise Area Marketerの活用がおすすめ

Datawise Area Marketerは、スマホの位置情報を基に過去から最新までの来訪データを一元管理し、地域別の訪問者数や滞在時間、回遊経路を地図上で可視化します。繁忙期と閑散期、施策実施前後の変化を比較でき、感覚に頼らない施策改善が可能です。

さらに性別・年代などの属性分析も豊富で、ターゲットに合ったプロモーション計画へと直結します。データは翌日に更新されるため、急なトレンド変化にも迅速に対応でき、CSVエクスポート機能により自治体や事業者間での情報共有も行うことが可能です。

 

まとめ

観光DXは、人手不足や低生産性といった課題を解消しながら、顧客満足度と収益性の向上を同時に実現する有効な手段です。デジタル技術の活用により、旅行者と事業者の双方に価値を生む好循環が各地で生まれ始めています。

重要なのは短期的な成果に偏らず、中長期視点で段階的に進めることです。まずは来訪者の属性や動線をデータで把握し、現状を可視化することが、観光DXの現実的な第一歩となります。

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